叔父

476 本当にあった怖い名無し [sage] 2012/06/27(水) 15:38:24.69 ID:Gb7wovmc0 Be:
当時我が家は古い日本家屋で、茶の間と台所の間にガラス戸があり、ガラス戸の向こうに
板の間があって、その向こうは一段下がって土間になっていた。
床下にはいくつもすき間があって、ネズミやイタチのような小動物が家の中に入り込むことは
ときどきあった。

8月初旬の夜、夫と二人、茶の間でテレビを見ていた。CSで映画をやっていた。
ガラス戸は開けはなっていて、ふたりが座っているところから板の間が見える状態だった。
ふと、気配を感じて私が板の間を見ると、そこに、猫よりも大きくて黒いかたまりがあった。
びっくりして声を挙げると、夫もそれを見てびっくりした。
すると、その黒くてなんとなくぬめぬめした感じのものは、のっそりと板の間から土間へ下り、
床下のほうへ去って行った。
猫では絶対になかったし、そもそも、いくら床下にすき間があると言っても、あんな大きな
生き物が出入りできるはずはない。
わたしは真っ黒だと思ったが、夫は猫で言うところの「白足袋」だった、と言った。

翌朝、わたしのことをかわいがってくれていた叔父の訃報が入った。
叔父はずっと病身で、わたしたちの結婚式にも出席できず、直接夫を紹介することが
できないままだったので、最後にどうしても気になってうちまで来たのかもしれない。

翌年、叔父の初盆だったわけだが、夫と晩ご飯を外で食べて来て帰宅したら、茶の間の
テーブルの上に、イナゴがいた。この家に何年も住んでいたが、家の中でイナゴを見たのは
これが最初で最後だった。これももしかしたら叔父だったのかもしれない。

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