- ウチの両親は駆け落ち同然で実家を飛び出してそれぞれの実家から絶縁されてた。
二人の実家からはまるで離れた場所に、家族四人で住んでた。両親と、兄と私。
親戚づきあいなんてものはしたことなくて、よくお盆とか正月に「おばあちゃんちで~」
なんて話を聞くと羨ましくなったのは覚えてる。でもそれ以外は普通に幸福な家庭。
十年程前、母が突然死して、父も後を追うようにして亡くなった。
兄は既に自立していたし、私も成人してたから、家を引き払った。
母はその土地の寺付きじゃない小さな墓地に埋葬されてて、父もそこに埋葬された。
家を引き払った私はその土地から少し離れた所で暮らしてる。
兄とは両親の命日に、年二回の墓参りの時だけ会う。お盆はなにもしてなかった。
両親が亡くなって二年目から、兄と墓参りに行くたびに、不思議なことが起こる。
私たちが墓へ行くと、必ず墓が綺麗にされてて、花が添えられてる。
- 二年目から毎年、必ず。最初は親戚の誰かかと思ったけど、両親は絶縁されてる。
それどころか、ここに暮らしてた事すら知らせてなかったという。
事実私たちは祖父母の顔も知らないし、両親の出身地も知らなかった。
両親の同僚、或いは友人かとも思ったけど、そんな話しも聞いたことなかった。
今にして思えば両親宛の年賀状なんかもほとんど来たことがなかった。
それに友人ならともかく、ただの同僚が毎年参りにくるとは思えないし
友人だとしたら、そこまで毎年参りに来るなら私たちの所へ
何かしらの連絡があっても不思議ではないのに、何もなかった。
不思議に思いながらも、特に害がある訳でもないので放っておいた。
毎年必ず紫色の花、名前は知らないけどなんか綿毛のような花を添えていくので
かぶらないように仏花からは紫のものは外してもらうようになった。
一度だけ、墓参りの時、墓地の方から歩いてくる人を見かけた事があった。
雨の日で傘をさしてたから顔はよく分からなかったけど、小柄な女の人だった。
多分あの人だろうな、って兄と結論づけたけど、誰かは分からないままだった。
今でも花は変わらず添えられている。
なんか、不思議なような変な話。あの人は誰なんだろう。