- 従兄弟が西日本の無敵の田舎町に住んでた。
村は田んぼや畑ばかりの閑散としてた。
ある時夜中にコンビニ行こうかって誘われついていったら、
チャリで1時間弱かかったw。
それぐらいの田舎なわけ。
従兄弟とは仲が良かったから物心着いた頃から二、三年に
一回ぐらいのペースで遊びに行ってた。
小さい時は家族総出だったけど、高校生になる頃には普通に
1人で行ったりしてた。
問題の夜は、俺が高2の時の冬だった。マイナーって言うと悪いけど、
かなり地味渋な県の中では二番目に大きい(小っちゃいけど)某駅で電車を
降りて、バスに乗った。
某駅をちょっと離れると灯りは疎らになって、時々真っ暗になる。
ド田舎の夜は本当に深いんだ。
で、俺はいつのまにか寝ちゃって、目が覚めた時にはどこ走ってるか
わからなくなって焦った。
- 乗客は誰もいなくなってて、運転手しかいなかったんで、○駅は過ぎたか?って近づいて聞いた。
するととっくに過ぎたっていう。
そこでちょうどバス止まったから降りて、引き返し始めた。
従兄弟に連絡したかったけど、携帯もない時代だし、それにそこらには赤電話も電話ボックスもなかった。
静かで灯りもなく家も人気もなくて何気に気味が悪かったけどただ、ありがたいことに道は一本道だったから、来た方向の逆を行けばいいのは分かった。
途中でちょっと歩き疲れたころ、錆び付いたバス停が見えた。
期待してなかったけど、時刻表
調べた。
18:50ぐらいが最終だった。
でもよく見ると、21:00ぐらいのところに歪な走り書きで「おわるバス」て書いてあった。
腕時計見たら、ちょうど21:00だった。
状況が状況なだけに、怖くなったので、俺は立ち上がった。
その時に視界が眩しくなった。
バスのヘッドライトだ。
バスが俺の前で止まって扉が空いた。
乗ろうかと思い半歩踏み出した時、バスの窓からありえない光景が見えた。
ギョッとしてマジで心臓が口から飛び出そうになった。
そのバス、乗客がみんな人間じゃなかった。
半人半獣とでもいうのかな。
首から上は狐とか猫とか犬とか狼とか熊観葉植物とか
なのに、人間みたくコートとか暖かい服を着て当たり前
みたいに座席に座ってるんだ。
で、さも無関心そうにこっち観てる。
-
あれ、怖さがリミット超えると腰がフワフワしてほんと立てなくなるのね。
俺はその場にへたり込んでしばらく動けなかった。
バスはその後すぐに走り去って行ったんで、命に別状はなかったけど。
その夜遅く、やっと従兄弟の家に着いた。
その件は整理が付かなくて黙ってたけど、数日ぐらい経った晩に、子供用の寝室で俺と従兄弟と従兄弟の妹の三人で恒例の怪談やった。
その時にその件話したんだ。
すると従兄弟とその妹が妙にニヤついて顔を見合わせた。
面白がってる風でもあり、嘲ってるようでもあった。
「なんかしゃべったん?」
従兄弟の妹が聞いて来た。
「いや、喋ってはないけど、なに、どうしたの?」
俺が聞いたら
従兄弟が言葉少なに言ったんだ。
「喋ってないんならそれ、行事やけんねぇ」
言ってることの意味がわからない。
従兄弟と従兄弟の妹の態度に妙な敵意が籠ってる理由もよくわからなかった。
次の日、俺は朝一でバスに乗って東京へ戻った。
そいつん家にはそれ以来二度と行ってない。