- 155 :本当にあった怖い名無し[sage]:2009/07/23(木) 06:41:39 ID:5MuCjt8gO
- 曾祖母さんから聞いた
曾祖母さんが子供の頃、曾祖母さんの実家の近くの山に変なやつがいた
目がギョロッと大きく眉も睫も髪もない
太っているのだがブヨブヨしていなくて顔も体もツルツルのっぺりしている
いつも全裸で肌は青白い
ちんこはついていなかったが女にも見えない
まるで魚みたいな印象なので曾祖母さん達はそいつを魚のおっちゃんと呼んだ
魚のおっちゃんのことは曾祖母さんと曾祖母さんの兄貴だけの秘密だった
魚のおっちゃんのことを奇形のようなものだと考えていたので、おっちゃんを見せ物にしないためだ
魚のおっちゃんは曾祖母さん達によくきのこをくれたし曾祖母さん達が怪我をすると悲しそうにする
だから優しいやつなんだろうと考えていたらしい
魚のおっちゃんは絶対喋らなくて表情はだいたいいつも無表情だが、大雨や洪水の前だけ大きな岩の前に来て岩を睨み「うぅ うぅ うぅ」と唸った
ある日も曾祖母さんは魚のおっちゃんが唸るのを見かけた
大雨が来ると思って曾祖母さん達はあわてた
だが何も天災はなくて、かわりにお喋りで口が悪いガキが魚のおっちゃんの噂を流しはじめた
そいつは異形じみたおっちゃんの姿まで正確に噂にしていて、そのせいか噂はしばらく笑いのネタにされてすぐ消えた
噂が嘘じゃないと知ってるのは曾祖母さん達だけだったはず
曾祖母さん達は噂を知ってすぐ魚のおっちゃんのところに行った
だがおっちゃんはいなかった
毎日毎日おっちゃんを探したが、大雨の前に岩の前で唸ったりもなかった
魚のおっちゃんはいなくなってしまった
曾祖母さんが最後に魚のおっちゃんを見たとき、魚のおっちゃんはいつもはじっと岩の前で唸るだけなのに、そのときは曾祖母さんをはっきり見た
そして両手で自分の顔を覆ったそうだ
曾祖母さんには、それがまるで泣いているように見えたという
ありえない場所、もう会えない人、今ではない時間、 幼い頃の不思議な記憶、 見えるはずのないもの。 そんな、怖くはなくても奇妙な経験を書き込むスレッド、 「不可解な体験、謎な話~enigma~」のエピソード置き場です。