山道の溺れそうな男

9 :本当にあった怖い名無し:2009/11/04(水) 16:02:26 ID:VbQI1Biw0
前スレで祖父のトンネル掘りの話を書いた者です。
祖母に会いに行ったところ、祖父のことをいろいろと聞けたので、また書きます。

祖父は婿養子だった。
自分の実家は、嫁ぎ先の隣町にあり、親思いだった祖父は頻繁に往復していたらしい。
自転車で片道40~50分はかかると思う。
祖父は酒を飲まなかったが、賑やかな場所や人の集まる場所が好きな人だった。
実家の方の宴会に呼ばれ、夜遅くに帰ってくることもあったようだ。

街頭など無い時代だが、それでも開けた場所なら月明かりで自転車がこげる。
しかし、町と町の間には山があり、狭い小道に木が覆いかぶさるように立っていて、
そうなるともう真っ暗闇で、木の葉を風がこする音がいろんな音に聞こえてくるのだと祖母はいう。
祖父はとても度胸のあった人で、夜道も全く気にしていなかったそう。

その真っ暗な山道で、向こうから、水の中を泳ぐような恰好で男が歩いてくる。
「お前さんどうしたんだ?」と聞くが、男は答えずに「あっぷあっぷ」と今にも溺れそうな様子でいる。
なんだ酔っ払いか・・・と思ったが、茂みがポッポッとかすかに光る。
あぁ、こいつはキツネに化かされてるのか。
祖父は面白くなって、助けもせずそのまま帰ってきたそうな。
キツネはいたずら好きで、酔っぱらいを化かしては楽しむんだって。
その時、火打石を打ったような、かすかな火を出すらしい。
(キツネの唾液だか涙だかが光るとか祖母は言っていたけど、本当かどうかは分かりません)

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