- 子供の頃、高熱を出すと必ず見てた夢がありました。
夜中に、多分どこかの山中で横たわっているんです。
雨も降っていて、寒いのかも知れないけど感覚が無い。
手足を動かそうと思っても全く動かないし、声も出ない、視線も動かせません。
近くで話し声が聞こえて、火を起こしながら二人の男性が会話してる。
『もう出せる涙もないよ、雨まで降ってくるしよお。情けないやらで・・・』
『・・・それでも元気ださにゃしょんないら』
とか、そんな話をしていて。それはハッキリ聞こえるんです。
そのうち二人が近寄ってきて、片方の男に持ち上げられて
『悪いなあ・・・』
と言われながら、火の中に放り込まれるんです。
悲しいとか、憎いとか、そういう感覚は無くて、
単に寂しくて、一人で奈落の底に落ちていくような感覚で、
そこで必ず涙を流しながら起きちゃうんです。
そういう夢を子供の頃よく見ていたんですよ。
- それで、その夢ってのはもう見なくなって久しいし、
ほぼ完全に忘れてたんですよね。
で、こないだ静岡の方で母方の法事があったんですよ。
母方の祖父の兄・・・大叔父って言うのかな?お爺ちゃんのお兄さんですね。
もう100を超えて大往生だったんですけど、老衰で亡くなりました。
葬儀の席で久しぶりに祖父(もう95歳)と話こんで、大叔父の若い頃の話になりました。
母も知らないような大叔父の若い頃の話がたくさん聞けて、結構楽しんでました。
話しているうちに祖父が少しずつ、
『でもな、兄貴もな、今だから話せるけどよ』
『戦争以外にもつらい目にあってんだからなあ・・・』
『おっきい病気して、ほうほうのていで大陸から戻ってきたら?』
『んで長年出来なかった子供にもようやく恵まれたと思ったら嫁さん流産しちゃったもんで・・』
『嫁さんも死んじまってかわいそうな事だったよう・・・』
『兄貴も村で一人だけ大陸から戻ってきちまったもんだで・・肩身も狭くてよお』
『裏では色々陰口叩かれてたら・・あいつだけ戻って子供こさえてなんてのう』
『おらそういう陰口聞くたびに我慢出来なくて何度殴ろうと思ったか・・』
ヘビーな話だなーと思いながら聞いてた訳なんですけれども。
-
『結局子供はロクなお経もあげてやれなくてオラと二人で裏山で燃しただよ』
『兄貴も泣いて泣いて、情けねえもう涙も出ないって・・オラも兄貴元気出せやって励ましたけど』
『雨は降ってくるし中々燃えねえしで・・・』
とそこまで聞いて、夢の事思い出して、あれひょっとしたらこの話・・・
って思ったんですよね。
夢の中の男二人は祖父と大叔父だったのかな、何か不思議だなーと思って書きました