- 666 :本当にあった怖い名無し:2011/05/05(木) 20:04:51.38 ID:LUVTfe3+Q
- 曰く、誰もいない旧校舎から綺麗な口笛が聞こえる。
曰く、入れない屋上から『エリーゼの為に』の口笛が聞こえる。
曰く、風の強い日、夜遅くまで居残りしてると、どこからともなく口笛が聞こえる。
『口笛幽霊』、『ハーメルン』などと呼ばれていた学校の七不思議の正体が先輩だったときには流石に吹いた。 - 669 :666[sage]:2011/05/05(木) 20:39:43.43 ID:LUVTfe3+Q
- 下げ忘れてしまいました。
今日みたいに、風の強い春の日。
補修で遅くなったその日に、物好きな友人達がハーメルンを探さないか、と言い出しました。
僕も以前から、その口笛吹きの事が気になっていたので快諾。友人二人と共に七不思議探しを行うことに。
「ハーメルンなら音楽室かトイレか屋上」
と友人Aが言い出したので、その三箇所をまわることに。
しかし、ハーメルンの姿はもとより、口笛の音すら聞こえない。
所詮は七不思議かー、と、その日はお開きになったのです。が、僕は、教室に忘れ物が有ったことを思い出しました。
忘れ物のノートを机から見つけ、帰ろうとすると、妙な音が耳に留まる。 - 670 :666[sage]:2011/05/05(木) 20:55:16.24 ID:LUVTfe3+Q
- 外を吹く風に交じって、階段のほうから音が聞こえる。か細い、口笛のような音が。
吹きすさぶ風かとも思いましたが、確かに旋律を持っている。
恐る恐る階段まで来ると、どう聞いても口笛の音が、確かに屋上へ続くの扉のから聞こえる。
どこぞの盗人よろしく、五分の恐怖と五分の好奇心で屋上の扉の前まで階段を上がると、ふっと音が消える。
聞き間違いかと、何の気無しに扉に手をかけると開く。先程まで、確かに閉まっていたのに。
軋む扉を両手で開けると、暗がりだが、誰もいない屋上。
「あの二人帰ったのか」
と、上から聞き慣れた声がする。見上げてみると、今自分が出てきた階段部分の上に据え付けてある給水タンクに、先輩がもたれるように座っている。
「うわ、センパイ…?」←まだ半信半疑
「おう。補修お疲れ〇〇」
「ここ、ハーメルン吹き居ましたよね?」
「ハーメルン、口笛吹き、混ざってるぞ。ついでに、それは俺だ」
清々しい位の自白だった。 - 671 :666[sage]:2011/05/05(木) 21:01:27.06 ID:LUVTfe3+Q
- 「ぅえぇっ」←ホントにこんな声
「リアクション良いな、相変わらず」
けらけらと笑いつつ、人生で一番マヌケな顔をした俺を見下ろす。
「まだわかんない?実は俺ハーメルンやってます。よろしくねー(笑)」
といって口笛を少し吹く。
澄んだ音色が風になびくようにして広がっていく。
自分が今まで聞いた中で一番綺麗な音色だった。 - 672 :666[sage]:2011/05/05(木) 21:30:06.57 ID:LUVTfe3+Q
- 「いやあ、一人になってくれて良かった。〇〇にしなきゃならない話があってね」
「ハーメルン継いでくれない?」
「はあ?」
曰く、ハーメルンは襲名制で、代々の先輩が、代々の後輩につたえてきた伝統ある七不思議なんだそうな。
そして先輩で六十九人目。先輩も今年で卒業だから、僕に白羽の矢がたったのだとか。
「ほら、ハーメルンの笛吹は、子供をたくさんつれてくじゃん?けど、代々のハーメルン達が巻き添えにするのはそれぞれ一人。だからハーメルンの口笛吹き。良く言ったもんだよね」
というセリフが妙に心に残った。
結局のところ、僕はハーメルンの口笛吹きをつぎ、先輩と同じように一人の後継者をたてて、それを受け継がせた。
ちなみにハーメルンには、代々口頭で伝わってきた彼等だけの曲があり、彼らを神出鬼没たらしめる、学校中の鍵束があり、と特権が多かった。
実は学校建設当初からのモノで、と彼らには伝わるが、果たして本当かどうかは分からない。
十数年前、自分が体験した、だれが何のために始めたのかも、いつから始まったのかも分からない、そんな謎なお話。
今でもハーメルンは自分の母校にいるんだろうか。
ありえない場所、もう会えない人、今ではない時間、 幼い頃の不思議な記憶、 見えるはずのないもの。 そんな、怖くはなくても奇妙な経験を書き込むスレッド、 「不可解な体験、謎な話~enigma~」のエピソード置き場です。