悪寒とは違う背筋を走る何か

282 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/05/23(日) 01:07:50 ID:FSQvGYP60
仕事や対人関係でゴチャゴチャあって、人間不信になってしまい、結構長い事、何もする気力もなく寝ているだけな期間があった。
食事をとり、ベッドにつっぷしていると、一日がすぎる。友人にも会わない。電話も、メールもしない。時には食事もとらない。
気づくと28時間たって、記憶の中から日付がひとつ飛んでいることもあった。

その間、家にいた猫二匹がずっと側に居てくれた。そばにいて欲しい時には寝ている隣に、ほっといて欲しい時にはほんの少し離れた所に、絶妙の距離感で。おかげでずいぶん、助けられた。

寝て暮らす生活の中、特に何ということもないのに、猫たちがパッと身をおこし、緊張した面持ちでこちらを見た。何だ、どうしたの、と撫でようとした途端、家がガクンと揺れた。地震だ。結構大きい。
ベッドの上、倒れるものの無い位置に移動すると、猫たちも隣に来た。揺れが収まってからTVで確認、震度3だった。すごいな、猫って分かるんだ。

その後も、同じ出来事は続いた。猫たちが緊張すると、5秒くらいで揺れがくるのだ。うちは関東で、軽い地震はよくあった。その度に、猫たちは反応。5秒あれば、それが何か理解してれば多少はマシな行動がとれる。

283 :本当にあった怖い名無し[sage]:2010/05/23(日) 01:09:41 ID:FSQvGYP60
ある日、さわさわと木々の葉ずれが聞こえ、部屋を風が通る中、横になりながら本を読んでいた。猫たちも側にいて、風のそよぎを楽しんでいる。ああ、気持ちいいな、と思いながらページをめくっていると、異様な感覚に襲われた。

葉ずれの音がまったく聞こえなくなり、風も止まったのだ。それと同時に尾てい骨から首根にかけ、ザッと何かが走る。あっ、と思い猫たちを見るのと、猫たちがこちらを見るのが同時だった。やばい。

ベッドの隅により、二匹を呼んでしばらくすると、何時もより長く大きな揺れが来た。幸いにして家具が倒れる事もなく、無事収まった。震度4、場所によっては5だった。

それからは、地震が来るのが分かるようになった。現実との乖離感、悪寒とは違う背筋を走る何かがアラートだ。まず、外れる事は無かった。

しばらくすると、ある程度元気になり、友人と会うようになった。地震が分かる事は、気味悪がられると思い、言わなかった。少しずつ、友人以外の人とも話せるようになり、短い時間だけど、仕事もまたやりはじめた。

半年ぐらいして、友人との会話の中で、地震の話がでた。最近よく揺れるよね、大きいの来たら怖いなぁ、等など。『事前に分かったら良いのになぁ』と友人が言った瞬間、つい『あ、分かるよ』と答えてしまった。
友人は『ソレはどんな感覚なのか、どんなタイミングで分かるのか』等をかなり細かく聞いてきた。ここで変にごまかすと、逆に気味悪がられる気がして、感覚を思い出しながら説明した。
背筋を走る何かが、寒気とはまた違う感覚だな、そういや、時間が止まるような感じがあるな、てのも、話してる最中に気づいたので、細かく話した。

一通り聞いた友人は少し難しそうな顔をして『それ、あまり人に話さない方がいいかも』と言い、他の話題になった。気味悪がられたりはしなかったので、少し安心した。

話してから三日ほど後、家で休んでいると、猫たちがパッとこちらを見た。え、どういう事だ、と困惑すると同時に、揺れがきた。震度、3だった。怪訝そうな表情で、二匹が顔を覗き込む。どういう訳か、予兆がまったく分からなくなっていた。

それ以来、8年ほどたったけど、未だにあの感覚は戻らない。何で身についたのか、何で無くなったのか、さっぱりわからない。

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