- 656 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・投稿日:03/12/26 08:38
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トンネルで不思議なできごとに出遭った。そんな話をよく聞くのだが、実は私にもそんな経験があ
る。この時期になると思い出すのだ。ちょうど冬休みに入った日のこと。小六だった。
そのトンネルは高速道路の下をまっすぐ横切る細くて短いトンネルだった。左右一車線ずつ、片側
にしか歩行者用の区切りがない、そんなところだった。今はアスファルト舗装されているが、この
当時はまだ舗装もされていなかった。場所は伏せた方がいいと思うので書かないが、ある県の農村
部とだけ申し上げておく。とにかく田舎のトンネルだ。
その日私は友人宅に行くためにそのトンネルを通った。まだ午後の一時過ぎだった。子供の足でも
数十秒で通りぬけられるくらいの短いトンネル。むこう側の出口がトンネルの外からだって見える、
そんなトンネルに入った途端だった。目の前が急に真っ暗になった。見えるはずの向こう側が見え
ない。なにが起きたのかわからなかったが、とにかくおかしいぞ、と思った。それでとにかく一度
外に出ようとふりむいたら、そこにはあるはずがない壁が。ちょうどトンネルの横壁と同じような
コンクリートの壁があった。入ったばかりの入り口が壁で全部塞がっていた。
怖くなり外に出ようとトンネルの反対側出口に向かって走ったが、いくら走っても外に出なかった。
先にも書いたがそもそも出口が見えない。いつもなら、あっという間に出られるはずなのに。そこ
でもう一度反対にもどると、やはり壁に突き当たって出られなかった。ちょうどながーい袋小路に
押し込められたような感じだった。
- 657 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・投稿日:03/12/26 08:40
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当然パニックを起こして「うわー」とか「おおー」とか叫んでいたと思う。壁も叩いたり蹴ったり
した。しかし壁に変化などあろうはずもなかった。しかたなくもう一度向こうに出ようと歩き始め
た。依然として出口は見えないままだったが、しばらくして妙な音がしているのに気づいた。横壁
の向こうから車の走る音がしていた。普通に道路を歩いている時にしている車の音。舗装していな
い道を走るジャリジャリという音。
そのときにわかった。「壁の向こう側にほんとのトンネルがあるんだ」って。じゃあ今いるここは、
と考えても答えは出なかった(というよりもいまだに答えが出ない)が、とにかくここはあのトン
ネルではない、それだけは確かのようだった。そこで横壁をさわりながら前に進んでいった。横壁
のどこかからトンネルに帰るのではないかと思ったのだ。聞こえるからにはつながっているところ
がある、と思うしかなかった。
ちょうどパントマイムでよくやってる「壁」って奴。あれのような恰好で壁を触りながら進んでい
ったら、突然、ほんとうに突然明るいところに出た。あたりを見ると20mくらいうしろにトンネ
ルの入り口が見えた。道端に立っていた。いつもの見慣れた場所。「こちら」に戻ってきたらしかっ
た。戻ることのできた理由はわからない。このあと急いで友人宅へ行き、これこれこうだ、と説明
したのだが、当然信じてもらえなかった。無理やりトンネルまで連れてきたが変わったところはな
く、「うそばっかりいってるんじゃない」と言いながらトンネルに入っていった友人も、なんのこと
もなくトンネルを通りぬけてまた普通に戻ってきた。
話はこれだけですが、ひとつだけ今でもどうなっただろう、と思うことがある。あの時私はひとつし
かない歩行者用の区切りに沿って中に入り、そのあともこの区切りの中で奥にいったり、戻ったり
壁を触ったりしていた。もし、あそこで区切りの向こう側、つまり奥に向かってではなく車道に
むかって横にずっと歩いていたら、むこうはどうなっていたのか、それがわからないのだ。壁があ
ったのか空間が続いていたのか。
ありえない場所、もう会えない人、今ではない時間、 幼い頃の不思議な記憶、 見えるはずのないもの。 そんな、怖くはなくても奇妙な経験を書き込むスレッド、 「不可解な体験、謎な話~enigma~」のエピソード置き場です。
トンネル
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